特許法改正による特許申請の取扱いの変更

特許法改正による特許申請の取扱いの変更など

特許法が改正されることによって特許申請の取扱いなどが変更されることがあります。法改正の内容を理解することによって最近の特許申請の流れ、傾向を知ることができると思います。

特許法条約を締結するための改正

発明について複数の国々で特許権を取得するためには、基本的には各国それぞれに特許申請の手続を行う必要があります。

しかし、各国では法令などによって独自に手続の要件が定められているために、出願人はそれぞれの国で定められた異なる要件に合わせて出願手続を行わなければならず、例えば多くの国々に出願する場合には大きな負担を強いられることがあり得ます。

そこで、このような出願人の負担を軽減するために、各国で特許申請の手続の要件を定める場合に最低限守らなければいけない共通の決まりごとをつくろうなどの目的で2000年6月1日に採択され、2005年4月28日に発効したのが特許法条約(Patent Law Treaty; PLT)です。

2013年12月18日にアメリカが36番目の特許法条約の締約国になり、締約国は現在36カ国ですが(2016年1月現在)、日本やアジアの新興国の多くはまだ加入していません。

日本も、中小企業などの手続の負担を軽減して国際競争力を高める、アジアなどの新興国に特許法条約の締結を薦めて日本企業が新興国で出願,権利化を行いやすくする、アメリカについていかなくちゃなどの理由で、特許法条約の締結に進んでいく流れとなっています。
2015年6月17日に既に特許法条約の締結について国会で承認されています。

特許法条約を遵守するために、特許法,施行令,登録令,施行規則の改正、審査基準の改訂作業などが行われていましたが、2016年4月1日に施行される改正特許法などで特許法条約締結のための整備は終わると思われます。
日本は2016年3月11日に特許法条約の加入書をWIPOの事務局長に寄託したそうなので、その3ヶ月後の2016年6月11日に特許法条約の締約国になります。
「特許法条約」及び「商標法に関するシンガポール条約」に加入しました(経済産業省)

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特許異議申立制度が導入されました

通常、特許出願をすると、出願の日から1年6ヶ月程度経った後に、発明の内容、特許出願人の名称など出願の内容が公報によって公開されることになります(出願公開制度)。

例えば企業の知的財産部などは、出願公開された競合他社の発明の内容などを調べて、事業を行っていく上で問題となる出願がないかチェックすることがあります。

もし、事業の妨げとなる可能性がある出願が見つかって、その出願が拒絶できそうなネタ(主に刊行物)を入手したような場合には、「この出願はこれらのネタを基にして新規性、進歩性などで拒絶することができますよ。」と特許庁長官に匿名で情報提供することが可能です。

しかし、上述したように、審査待ち期間が2.1か月程度に大幅に短縮される早期審査を利用する特許申請の件数が増加し、このような出願の特許査定率は比較的高いために、出願公開される前に特許権が認められる出願が増えています。
また、早期審査を利用しなくても、平均審査待ち期間は9.6ヶ月と短縮されているために、早めに審査請求を行った出願は出願公開される前に特許権が認められる可能性が十分に考えられます。

このように出願公開される前に特許権が認められることになると、第三者は特許権が認められたことを知らせる特許掲載公報によって初めてその発明の内容を知ることになりますので、審査は既に終わっており情報提供することによって特許権利化を阻止する機会が与えられないことになります。
特許権が与えられた後であっても、情報提供をすることはできますが、その情報提供を利用して審査官が特許の有効性を考え直すようなことはありません。

改正前は、このように特許権が与えられた後に、第三者がその特許の有効性に物言いをつけて特許庁に考え直してもらいたい場合には、特許無効審判を請求する必要がありました。

特許無効審判は、審判の請求人と特許権者が当事者として対立して争う構造がとられていて、口頭の陳述で審理を行うことを原則としていることなどから、準備も含めて手続的な負担が大きいし、その分代理人にかかる費用などの負担も大きいです。このために無効審判を請求するハードルは高いです。
また、特許権者側から警告などの動きがまったくないにもかかわらず、いろいろと負担の大きい無効審判を請求してあえて波風を立てるようなことをするのは得策ではないなどの理由から無効審判は積極的には利用されにくい面があります。

このようなことを理由の一つとして、平成26年特許法改正により、特許権が与えられた後の一定期間(特許掲載公報が発行された日から6ヶ月以内)に限って、権利付与の見直しを求める機会を第三者に与え、第三者から見直しの申立てがあったときは、特許庁の審判官がその特許が有効かどうか考え直す審理をする特許異議申立制度が導入されました。
平成27年4月1日に発行された特許掲載公報に掲載された特許から異議の申立てが可能になりました。

異議を申し立てる側からすると、特許異議申立は特許無効審判よりも情報提供に近い性格です。
異議申立ては情報提供と異なり匿名で行うことはできませんが、無効審判のように当事者が対立するようなものではなく、申し立てた後は申立人が手続に直接かかわることがほとんどなく手続的な負担は軽いです。また、費用も無効審判と比べて安くすみます。

異議申立ての手続きにおいて、特許権者は特許の取消決定を避けるために訂正を請求することがありますが、その訂正の請求について申立人は意見書を提出することが可能です。
基本的には申立人にとって有益な手続ですので、この意見書提出の機会の保障を望むことのほうが多いとは思いますが、望まない場合には意見書提出の機会が与えられないようにすることが可能です。

特許異議申立制度について特許庁が質問に答える形で説明しています。
特許異議の申立てQ&A(特許庁)(pdf)

特許異議申立制度についてのまとめです。

特許異議申立制度のまとめ

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天災地変などを理由とする特許申請に関する手続の救済規定が拡充

大地震などによって、定められた期間内に特許申請に関する手続ができなかった場合に、特許法では拒絶査定不服審判の請求手続など一部の手続を除いて期間を延長する救済規定がありませんでした。

特許法で救済規定がない手続であっても、特許法とは別の「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」という法律によって手続期間の延長を認めることが可能ですが、起きた災害が「特定非常災害」として政令で指定される必要があり、日本国外で起きた災害は指定の対象外であると考えられます。

諸外国の特許庁では、自国外で災害が起きた場合であっても救済規定が整備されていることが多く、東日本大震災の際にも多くの国々で日本からの出願に関する手続について救済規定に基づいて救済が行われました。

そのような事情から、平成26年特許法改正により、日本でも特許法で国内、国外を問わず災害が起きた際などの救済規定をまだ救済されていない所定の手続について設けることになり、平成27年4月1日から救済規定が拡充されることになりました。

例えば、パリ条約の優先権主張のための優先権証明書の提出手続、分割出願の手続、第1~3年分の特許料の納付手続などについても、手続を行おうとする者が、日本国内外で発生した天災地変などの「責めに帰することができない理由」により所定の期間内に手続を行えない場合には、その理由がなくなった日から14日以内(日本国内に住所,営業所などを有しない者は2ヶ月以内)で、期間経過後6ヶ月以内であれば手続を行うことが可能となりました。

その責めに帰することができない理由による期間経過後の救済について(特許庁方式審査便覧,PDF)

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特許申請の審査基準の改訂など

特許申請の実体審査では、特許請求の範囲に複数の請求項が記載された場合などには「発明の単一性の要件」について審査されます。
また、拒絶理由が通知された後の審査において、特許請求の範囲の補正があった場合には「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」の要件(「発明の単一性の要件」を補正後まで拡張した要件)について審査されます。
これらの審査において要件を満たさないと判断された請求項は審査対象から除外されてしまいますが、審査基準が改訂され、運用が緩和されました。
審査の運用が緩和されたことにより、審査の対象となる範囲が広がりました。
詳細につきましてはこちらを参照ください。

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