中国専利法実施細則等の施行について

中国専利法実施細則等の施行について

中国では専利法(日本における特許、実用新案、意匠に関する法律)が改正(第三次)され、2009年10月1日から施行されています。

遅れて、専利法実施細則(政令に相当)及び審査指南(審査基準に相当)が公布され、2010年2月1月より施行されることになりました。

中華人民共和国特許法(改正)日本語訳(ジェトロ)(pdfファイル)(リンク先なくなりました。)
中華人民共和国専利法実施細則(改正)日本語訳(ジェトロ)(pdfファイル)
中華人民共和国専利審査指南(改正)日本語訳(ジェトロ)(pdfファイル)

今回改正された中国専利法には、
(1)発明及び実用新案の新規性の要件が厳しくなり(第22条第2項,第5項)、国内外で公知・公然実施された技術には権利が認められない(改正前は中国国内のみ)、出願人が同一であっても出願公開前の先願が後願の新規性を失わせる抵触出願になり得る(欧州と同様、日本では抵触出願にはならない)。

(2)同一の出願人が同様の発明、実用新案について、実用新案に関する出願と発明に関する出願を両方した場合の取り扱いを明確に規定(第9条第1項)。

(3)いかなる部門又は個人も、中国国内で完成した発明又は実用新案について、外国に出願する場合には、まず国務院特許行政部門で秘密保持審査を受けなければならず、これに違反した場合には中国で特許権は付与されない(第20条第1項,第4項)。

などの改正が含まれています。

上記(2)については、中国では、発明についての出願には審査に時間がかかるのに対して、実体審査が行われない実用新案の出願は早く権利付与されるので、同様の技術について同一の出願人が実用新案と発明の両者について出願する方法が用いられる場合がありましたが、今回の改正ではその取り扱いについて明確化しています。

この場合には、同一の出願人が「同日中に」に実用新案と発明についてそれぞれ出願し、先に取得した実用新案特許権(実用新案についての権利)が終了する以前において、出願人が実用新案特許権の放棄を宣言することにより、発明特許権(発明についての権利)も付与されます(専利法第9条第1項)。

具体的には、
①同日の出願時に同様の発明、実用新案について、すでに他方の出願をしていることをそれぞれ説明しなければなりません(専利法実施細則第41条第2項)。

②発明の出願において、審査で拒絶理由が見つからなかった場合、国務院特許行政部門は出願人に実用新案特許権の放棄を声明するように通知します(専利法実施細則第41条第4項)。

③出願人が実用新案特許権の放棄を声明した場合には、国務院特許行政部門は発明特許権の付与決定を行います(専利法実施細則第41条第4項)。

④実用新案特許権は、発明特許権の付与公告日をもって終了することになります(専利法実施細則第41条第5項)。
よって、発明特許権が有効となる付与公告日までは実用新案特許権による保護が可能となりますので、中国に特許出願をして早期権利化を望む場合には有効な方法になり得ると思います。

なお、中国の実用新案の出願では、実体審査はされず初歩審査が行われますが、権利の安定性を向上させるために初歩審査において新規性、有用性(専利法第22条第2項,第4項)などについても審査されることになりました(専利法実施細則第44条(2))。

上記(3)については、改正前は、中国の部門又は個人が、中国国内で完成した発明等について外国に出願する場合には、まず国務院特許行政部門に出願しなければならない等の要件がありましたが、
改正後は、中国に限らずいかなる部門又は個人でも、中国国内において完成した発明等について、

①直接、外国に出願する場合(国際出願を含む)には、事前に国務院特許行政部門に秘密保持審査の請求を申し立て、かつ、その技術方案について詳しく説明しなければなりません(専利法実施細則第8条(一))。
よって、中国国内への出願を経ずに直接外国に出願することも可能になりましたが、技術法案について詳しく説明する必要があったり、秘密保持の請求提出日から4ヵ月経過するまで秘密保持審査通知がないことを確認する必要があります(専利法実施細則第9条第1項)。

②中国に特許を出願した後に、外国に特許を出願する場合(国際出願を含む)には、外国に出願する前に国務院特許行政部門に秘密保持審査の請求を申し立てなければなりません(専利法実施細則第8条(二))。
この場合にも、秘密保持の請求提出日から4ヵ月経過するまで秘密保持審査通知がないことを確認する必要があります(専利法実施細則第9条第1項)。よって、早めに秘密保持審査の請求を申し立てる必要があると思います。
なお、中国を受理官庁として国際出願する場合には、同時に秘密保持審査請求を提出したものとみなされます(専利法実施細則第8条)。

2010年02月01日 |

カテゴリ: 特許関連


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